赤外光源の選定は、センサーシステムや測定装置の性能を左右する重要な判断です。しかし、多数のメーカーと製品が存在する中で、「どのメーカーのどの製品を選べばいいのか」と悩む設計者も多いでしょう。本記事では、よくある設計課題別に、最適な赤外光源メーカーと製品をご紹介します。
設計課題1：24時間連続稼働の環境モニタリングシステム
課題の詳細
ビル管理システムや温室のCO2モニタリングなど、長期間無停止で稼働するシステムでは、光源の信頼性と寿命が最重要課題となります。
要求仕様
- 連続使用寿命：20,000時間以上
- 光出力の長期安定性：±2%以内
- 広い動作温度範囲：-10℃～60℃
- メンテナンスフリー運用
おすすめメーカーと製品
押野電気株式会社 - NDIR方式赤外光源
押野電気のNDIR方式赤外光源は、ガスセンサー専用に設計されており、環境モニタリング用途での豊富な実績があります。
| ◼︎推奨理由 | ガスセンサー専用設計、長寿命・高安定性、CO2測定での豊富な実績 |
| ◼︎適用例 | ・ビル空調システムのCO2センサー ・温室・植物工場の環境制御 ・地下駐車場のCO/CO2モニタリング |
設計のポイント
長期運用では、初期コストよりもライフサイクルコスト（総所有コスト）を重視しましょう。光源交換頻度、消費電力、校正頻度を含めた評価が重要です。
設計課題2：研究開発用の高精度分析装置
課題の詳細
研究室や分析ラボでは、最高レベルの測定精度と柔軟な光学系構築が求められます。
要求仕様
- 高い光出力安定性：±0.1%以内
- 広い波長範囲
- 柔軟な光学系設計
- 精密な出力制御
おすすめメーカーと製品
壺坂電機株式会社 - SOL-300IR
壺坂電機のSOL-300IRは、光学測定用途に特化した高品質光源です。
| ◼︎推奨理由 | 研究用途向けの高安定性、精密測定対応、分光測定での実績 |
| ◼︎適用例 | ・大学・企業研究所での分光分析 ・新規センサーの開発・評価 ・標準測定システムの構築 |
設計のポイント
研究用途では、光源の温度管理と定期的な校正が精度維持の鍵となります。温度制御機構の組み込みと、参照光路の設置を検討しましょう。
設計課題3：医療機器への組み込み
課題の詳細
医療機器では、人命に関わるため、最高レベルの信頼性と安全性が要求されます。
要求仕様
- 医療機器認証対応
- 極めて高い信頼性
- 長期安定性：±1%以内
- 厳格な品質管理
おすすめメーカーと製品
押野電気株式会社 - NDIR方式赤外光源
押野電気のNDIR方式赤外光源は、医療機器メーカーでの採用実績があり、高い信頼性を提供します。
| ◼︎推奨理由 | 医療用途での採用実績、高い品質管理基準、長期安定性 |
| ◼︎適用例 | ・人工呼吸器のCO2モニター ・麻酔ガスモニタリング装置 ・呼気分析装置 |
設計のポイント
医療機器では、光源の二重化（冗長化）や、故障検知機能の組み込みを検討しましょう。また、長期供給保証（10年以上）の確約も重要です。
設計課題4：セキュリティ・監視用途
課題の詳細
夜間監視カメラの補助照明など、広範囲を照射する必要がある用途です。
要求仕様
- 広い照射角度
- 特定波長（850nm前後）での高出力
- 長寿命
- 低発熱
おすすめメーカーと製品
ウシオライティング - 監視用LED投光器
ウシオライティングの監視用LED投光器は、セキュリティ用途に最適化された赤外線照明です。
| ◼︎推奨理由 | 監視用途専用設計、高出力、広範囲照射、長寿命 |
| ◼︎適用例 | ・屋外監視カメラの補助照明 ・駐車場・倉庫の夜間監視 ・セキュリティシステム |
設計のポイント
監視用途では、カメラの感度波長と光源の放射波長を合わせることが重要です。また、照射距離と範囲に応じた適切な出力と配光設計が必要です。
設計課題5：標準化された産業用センサー
課題の詳細
多くのメーカーが採用している標準的な光源で、入手性と互換性を重視する場合です。
要求仕様：
- 標準規格品
- 複数メーカーからの供給
- 豊富な実績
- 技術資料の充実
おすすめメーカーと製品
岩崎電気株式会社 - 産業用白熱ランプ
岩崎電気の白熱ランプは、長年の実績を持つ信頼性の高い標準光源です。
| ◼︎推奨理由 | 数十年の製造実績、安定供給体制、標準規格品で入手性が高い |
| ◼︎適用例 | ・標準的なNDIRセンサーモジュール ・産業用ガス検知器 ・計測機器 |
設計のポイント
標準品を使用する利点は、セカンドソースの確保が容易なことです。ただし、差別化が難しいため、システム全体での付加価値創出が重要になります。
最終的な選定のコツ
複数メーカーのサンプル評価
可能な限り、複数メーカーの製品をサンプル評価しましょう。カタログスペックだけでは分からない実使用上の特性を確認できます。
長期的な視点での評価
初期コストだけでなく、10年間の総所有コストで評価します。特に、以下の要素を考慮しましょう。
- 光源価格 × 交換回数
- 消費電力 × 稼働時間 × 電力単価
- 校正費用 × 校正回数
- メンテナンス費用
メーカーとの関係構築
一度採用したら、長期的な関係になります。技術サポートの質、コミュニケーションの取りやすさも重要な選定基準です。
迷ったら実績を重視
技術仕様が拮抗している場合は、類似用途での採用実績が豊富なメーカーを選ぶのが安全です。
まとめ
赤外光源の選定は、用途によって最適な選択が大きく異なります。
あなたの設計課題に最適な赤外光源を見つけ、高性能で信頼性の高いシステムを実現してください。製品選定でお困りの際は、各メーカーの技術サポートへご相談されることをおすすめします。
